幼児への接し方について

「やればできる」という言葉の危険性、硬直マインドと成長マインドについて

 

「◯◯ちゃん、○○くんなら、やればできる!」という言葉を使うことってありますか?実際、センスや能力が高いからやればできるのに…とか、そうじゃなくても努力したら上手になるのに…という生徒さんって沢山いらっしゃいますよね。どうにかポジティブに挑戦してほしいな、という気持ちになるのは、先生として親として自然なことだと思います。

ただ、この「やればできる!」という言葉。使う相手やタイミング、状況を間違えると、逆効果な言葉になってしまうデリケートな言葉なんです。

では、どんな人に対して「やればできる!」という言葉はNGなのか。それがなぜNGなのか。では、そういうタイプの人にはどのように声をかけたら良いか、そして、「やればできる子」が「本当にできる子」「自ら積極的にチャレンジをしていく子」に変わるために、我々講師や親御さんがしてあげることのできる簡単な方法を共有したいと思います!

 

「やればできる」を使うべきではない人

「やればできる!」という言葉を使わない方が良い人は、こういうタイプの人です。

 

・チャレンジはできればしたくないって思考の人 

・ちょっと失敗したり壁にぶつかると諦めモードになりがちな人 

・努力することが好きではない、苦手な人 

・練習の過程やその内容よりも上手にできた!という結果だけにフォーカスしがちな人 

・人からどう評価されているのかがすごく気になる人 

 

この5つです。

 

逆に、 

・チャレンジ精神のある人 

・失敗することは大事だから失敗なんて恐れない!という思考の人 

・努力することが好き!楽しい!という人 

・演奏の結果よりもその過程を大事にする人 

・人からの評価よりも自分自身の評価も大事にする人 

には、「やればできるよ!」とポジティブな言葉をかけてあげると高い効果が生まれやすいです。 

  

なぜNGなのか

では、先程の「やればできる!」という言葉を使わない方が良いタイプの人にはなぜ、そういう言葉はNGなのか、という話を書きます。 

 

先程の、 

 

・チャレンジはできればしたくないって思考の人 

・ちょっと失敗したり壁にぶつかると諦めモードになりがちな人 

・努力することが好きではない、苦手な人 

・練習の過程やその内容よりも上手にできた!という結果だけにフォーカスしがちな人 

・人からどう評価されているのかがすごく気になる人 

 

というのは、『できること』しかしない人がとても多いです。 

そういうタイプの人の心理的な特徴は、『できることというのは最初から上手にできるし、自然とできるようになるもの』と考えている場合が多いそうなんですね。 

こういうのを「硬直マインドセット」と言います。 

 

この硬直マインドを持っている人の多くは、「できること」というのは、成長や努力によってできるのではなくて、才能のおかげで上手にできるものや最初から人が持ち合わせているものというのは決まっているんだ、と考えている訳ですね。 

先生や親御さん目線で見た時に「あの子、やればできるんだからこれもやればいいのに、なんだかもったいないなぁ」と思うかもしれませんが、そもそもその人自身にとっては、「その人が自分で思っている“やればできること”」以外への意欲が低い訳なので、「○○ちゃん、○○くんならやればできるよ!」「もっと頑張ってみようよ!」と言ったところで、その子にとってはそれは難しいんですね。 

 

なので、その言葉に対して響くこともなければ当然行動力の促進にはつながっていかない訳です。 

 

そういう場面で硬直マインドが働いているお子さんに対して、仮に「大丈夫!やればできるから!」「やればできるんだから、ほら、椅子に座ってやってみよう」「やらないと時間が勿体ないよ」というような言葉がけをして、やらせたとしましょう。

もしそれでその子がチャレンジをしたとして、でも「やればできる」と言われたことが一度でできなかったとしたら、「ほら、やっぱり私、僕、できないじゃん」となってしまう可能性があるんですね。 

 

つまり、やり方を工夫したり繰り返し練習したりすれば本当はできるのに硬直マインドが働いている子に対して「やればできる!やればできる!」と言えば言うほど、この子にとってはプレッシャーが大きくなりますし、失敗した時の自己嫌悪感も大きくなってしまったり、失敗を恐れるようになってしまうんです。 

そうすると結果として、余計に「できること」以外に対してのモチベーションが下がってしまう訳なんですね。 

 

ドゥエック教授の実験を基に

スタンフォード大学のドゥエック教授が行った実験のお話です。 

 

ドゥエック教授は、子どもたちを集めて2つのグループに分けたうえでIQテストを行いました。 

そして、その結果報告をする時に、1番目のグループのお子さん達に対しては「とっても良い点数だったね!君は頭が良いんだね!」とか「君は天才なんだね!」といった形で子どもの生まれ持った部分を褒めるようにしました。 

一方、2つ目のグループのお子さん達に対しては「とっても良い点数だったね!頑張って取り組んだんだね!」とか「一所懸命チャレンジできたね!」といった形で努力したところ、頑張ったところを褒めるようにしました。 

 

すると、その結果、2番目のグループのお子さん達は、テストを続けていくと「もっと難しいテストがやりたい!」と自らのテストの難易度を上げていったのに対して、1番目のクループの生まれ持ったものを褒めてもらったグループの子達はそのまま簡単なテストを選び続けたそうです。 

つまり1番目のグループの子達は「できること」に対してのチャレンジ精神しか湧かなかったということです。 

 

硬直マインドが働いている子にはどうすれば良いのか

ネガティブ思考な子、そして「やればできる子」と呼ばれるお子さんが「本当にできる子」に変わるためには、硬直マインドから脱却して「人は努力や練習によってできることが増える。変わることができる」という「成長マインド」に変わってもらうことが重要です。 

 

常日頃のレッスンから「努力や頑張ったこと」を褒めてあげる。その積み重ねを行っていくことが硬直マインドから成長マインドに変わってもらううえでとても簡単で効果的な導き方です。 

 

生徒さんが上手になった時や要領を得てきた時なんかは、先程の実験のように「天才!」とか「頭良いね!」とかそういった生まれ持ったものを褒めるよりも(「努力の天才」とかはまたちょっと違いますが)、「頑張って練習したもんね!」「一所懸命演奏しているところが素敵だったよ!」とその子が努力していた部分を伝えてあげる方が「成長マインド」の方向に進みやすくなると思います。 

 

また、生徒さんが新しいことや今向き合っている内容にチャレンジしたがらない場面においても、「やろうよ!きっとやればできるよ!」とついポジティブな言葉を使ってやる気を引き出そうとするのではなく(人や場合によっては試してみるのは有り)、

例えば「じゃあ先生が○○ちゃん○○くんが楽しくできるように工夫してみようかな~」と先生がお持ちの引き出しから別の方法を持ってきたりひらめいたアイデアをゲーム感覚で取り組んでみたり、

別の動画で紹介した「やることリスト」を活用したり、

先生がわざと失敗してみせたり(人によっては逆効果にも)、先生の失敗談を語ったりと、

その子がレッスン終了時間までやり切り、また次も来たくなるような言葉がけや導き方を研究していきましょう。 

 

生徒さんによってその最適な方法も変わってきますが、先生自身もこのような経験を積み重ねていくことで徐々に「この子にはこの方法が合う」というのがすぐビンゴするようになってきます! 

こうして「硬直マインド」から「成長マインド」へ徐々に変わっていく過程の中で、今までは「できること」にしか挑戦しなかったお子さんも「努力や練習によってできることが増える」ということを学んでもらいましょう。

 

その結果、「やればできる子」ではなく「本当にできる子」「自ら積極的にチャレンジをしていく子」にどんどん近づいていくと思います。 

 

おわりに

僕は決して硬直マインドセットを持っている人を否定している訳ではありませんし、全ての人を成長マインドへと変えていくべき、と思っている訳でもありません。努力が苦手な人の中にも「不必要な努力をせずに、物事を効率よく考えて進めることができる」という人もいます。 

レッスン方針に迷った時は親御さんと思いの共有をすることが大切だと考えています。 

 

そして、いつも先生方からご相談をいただく際に口癖のように「人によりますが…」と前置きを入れますが、本当に生徒さんのキャラクターや長所短所、成長過程、レッスン状況、どんな伏線をレッスンで散りばめてきたか、家庭の教育方針などによっても最適なアプローチ方法は変わってきます。 

いくつかの可能性や解決策の例を、いただいた情報を基に提案できたらと思っています。

  

何かありましたら、また演奏談義・レッスン談義・教育談義などができたら嬉しいです! 

  

読んでいただきありがとうございました。 

 

 

 

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